2011年8月16日火曜日

亀も空を飛ぶ

概要
亀も空を飛ぶ』(かめもそらをとぶ、Kûsiyan jî dikarin bifirin)はバフマン・ゴバディ監督・脚本による2004年イラクイランフランス映画。フセイン政権崩壊後にイラクで制作された初めての映画である。アメリカ合衆国による侵攻直前のクルド系の地域の戦争に傷つきながら生きる子供たちを神話的に描き、2005年ベルリン国際映画祭Glass Bear賞や、ロッテルダム国際映画祭観客賞受賞など国際的に高い評価を受けた。出演しているのは実際の戦災孤児たちである。日本では2005年に岩波ホールで公開された。(Wikipesiaより引用)



舞台はアメリカが介入する前の、イラク戦争中のイラク。
兵器の残骸がいたるところに積み上げられている集落。
いつ戦争が始まるかわからない不安の中で生きている人々。
そんな過酷な状況の中で、情熱を持って村の子どもたちを仕切って働かせるリーダー格の少年、サテライトを軸に話が進んでいく。



村に外部から、兄と妹と小さな弟が移ってくる。
周りの環境に馴染めない兄弟。かたくなに心を閉ざしている兄弟。
サテライトは、彼らの心を開こうと努力するが、兄弟は口をきこうとしない。
サテライトの力もむなしく、次第に兄弟に、悲劇が起こっていく。



イラク戦争について僕が知っているのは、夜間に緑色の光が飛び交うニュース映像、そのくらいだ。
ぞの地域に生活している人々の様子まではうかがい知ることはできなかった。
地雷撤去を生活の糧にしている子どもたちがいることを知らなかった。



この映画は、そこら辺の描写がリアルですごかった。
実際の戦争孤児たちが出演している。
腕がなかったり、足がなくても器用に走っている子どもがいたり。
ほとんどが地雷の影響だろう。
地雷を撤去して、売るというシステムが存在するのがそもそもの原因だ。
現在も続いているのかもしれない。
しかし、それを地雷撤去をやって食っていくしかないということ。何という現実だろう。



極端な暴力の描写はない。戦闘機が飛び回るような、派手な爆撃シーンなどもない。
子どもたちは、環境にうまく適応して、楽し気に暮らしているようにも見える。
しかし、戦争というもののどうしようもない状況が、ひしひしと伝わってくる。
人々の力ではどうにもならない、受け入れるしかない現実の大きさを伝えている。



それがうまく物語として、一つのストーリーとしてまとめられているところにこの映画の意義がある。
爆発や、人々の叫びを切り取ったニュース映像だけでは伝わって来ないものがある。
英雄の活躍や、戦争中の男の友情を描いた「プライベート・ライアン」みたいなものだけが戦争というわけでもない。



タイトルの、「亀を空を飛ぶ」とはどういう意味なのだろうか。
Turtle can fly。
亀は空を飛べない。身を守るために甲羅に閉じこもる。




でも、どんな状況でも、自由や可能性はどこかに残されているということなのだろうか。



83点。